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真夜中に腕のしびれで目が覚めた。隣を見ると、女性が寝息を立てながら私の腕にしがみついている。寝顔を撫でた後に、腕をそっと振りほどきタバコとライターを持って外に出ようとした。

「どこに行くの」

気だるい声が聞こえてきた。起こしてしまったのかな。私は口をすぼめてため息をついた。

「煙草を吸いに」

出来るだけ感情をこめずに言った。後ろめたいことなど何も感じてないから。

「…そう」

そのまままた寝息が聞こえた。ベッドには律儀に私の分のスペースが空いていて、それを見たとたん胃の中に溶けた鉛が入ってくる気がした。気分が悪い。早く吐き出そう。

階段口で、煙と一緒に体の中の黒いものを吐きだしていく。体に残ったのはめんどくさいという気持ち。深入りする気もないしされても困る。ふと1年前のことを思い出した。抱き枕の代用品として過ごした日々。なんだ、あの頃とあんまり変わって無いな。違うのはセクサロイドとしての機能がついたこと。進化?変化?それとも退化?

女性の喘ぎ声ほど萎えるものは無いな。世の男性はこんなものを聞いて興奮するのか。実際私も練習したが確かに客に受けは良かった。バカじゃないかな…心の底ではあざけ嗤って、表面上は顔を歪めて。

少し昔のことを思い出してたらフィルターに火が届きそうだったので揉み消した。火の下を確認して部屋に戻った。

「おかえり」

また気だるそうな声が聞こえた。そばに近寄りそっと髪を撫でると薄目でも口元がほころんでいた。吐きだしたはずの黒いものがまた溜まってきた感覚がする。気持ち悪い。

「はい」

ただいまとは言わなかった。

「寂しいよ」

私は寂しくないよ。

「これからちょっとずつね」

これからはないよ。


「もう寝ましょう」

口元をふさぎ再び腕を貸した。少しの静寂の後聞こえる寝息が、また私の体に黒いものを溜める。吐きだそうと思い目を閉じたら少しだけ涙が出た。思いのほか心地よかった。

頭の中に白いヤギが浮かびあがり崖を飛び下りていった気がする。そのヤギがどうなったかは…思い出せない
2010.10.25 Mon l とある~ l コメント (0) トラックバック (0) l top
昔から人の顔を見る癖があった。正確には顔を見て機嫌を伺っていた。大勢の人には気持ち悪がられ、殴られることもあった。

「見るな、気持ち悪い」

言葉には出てなくても、言われている気がした。殆どが自分の被害妄想だと思う。けど、実際に言われた経験が今でも心に残っている。



「その目がいいわ」

中には変わり者もいた。この変わり者の傾向としては、精神的に不安定、同性愛の気がある女性がほとんどだった。

「貴方の魅力はその中途半端なところよ」

誉められた気はしなかった。男としては頼りなく、女としては可愛げが無い。下種な根底を薄い膜で幾層にも覆っても、結局は透けてしまう。いわく、化学物質で汚染されたドブ川らしい。キラキラと光っているのに有毒。でもその環境を好む魚もいる。

「ねえ、あれやって」

そう言われて、自分の右手の人差指と中指をくっつけ、それに舌を這わせながら上目使いで相手の顔を覗き込んだ。唾液をわざと多く含ませてそれなりの音を出すと、相手は満足そうだった。

「もう行こうよ」

この変態が…心の中でそう毒づきながら、居酒屋を出て、河川沿いのホテルまでタクシーを拾った。いつまでこんなことを続けるんだろうか、ほんの少しの罪悪感、それより少ない不安感が含まれた私の心は腐っているな。そう思いながらふとタクシーから外の景色を見てみるとドブ川が広がっていて、少しだけ泣きたくなった。
2010.07.12 Mon l とある~ l コメント (0) トラックバック (0) l top
駅のホームで待っていたのは

あまり慣れていないであろう化粧をした女の子だった。

可愛いよと言うと、ありがとうという言葉が返ってきて

いつも通りの光景だった。

「今日は化粧してると思ったよ」

黙って唇をふさぐ。

ああ、彼女は眼をつむるのかと

今更ながらに気付いた。



とりとめもない会話をして

あてもなくふらついて

お腹がすいたら何かを食べて

疲れたら立ち止まって

欲しくなればお互いを求めあう。

キスは三回目から数えるのをやめた。



「こんなあたしでごめんね」

甘えてくる女の子を撫でて

聞こえないふりをした。



いつか「僕」が必要無い時が来る。

その時は黙って消えよう。



「ちゅぅ」

女の子がこちらを見て笑っていた。

今日最後のキスをした。
2010.06.01 Tue l とある~ l コメント (0) トラックバック (0) l top
鳥篭の鍵を無理矢理壊し、外に出てみれば複数の猫に襲われました。

傷つき、片翼が折れたので、鳥篭に戻ろうと思ったら、それは前より小さく、そして頑丈になっていました。

そこで出会った小鳥は、黙って傍にいてくれました。


面会室で無言で見詰め合う女の子と青年。

女の子は笑っていて、青年は目が虚ろでした。

女の子は無言で口元をこちらに寄せてきました。

青年はそれに気づき笑顔で応対しました。

「ねえ」


なんで


「私…」


そんなに


「ママになりたい」


笑ってるんですか。


傷ついた鳥は鳥篭の中から月を見上げ、

自分はもうあそこにはいけないのかなと思いました。

片翼の代わりにするには、小鳥は脆弱すぎました。

それでも鳥は、鳥篭の鍵を壊そうと足掻いていました。

今度襲われたら、もう片方の翼を失うと薄々わかっていながら。
2010.05.11 Tue l とある~ l コメント (0) トラックバック (0) l top
「今日は来ないかと思ったよ」

潤んだ瞳は、あくびのせいだと思いました。

「不安だったよ」

身体の震えは、寒いからだと思いました。

「お願い…」

肩ごしに感じる温もりは、寂しさからだと思いました。

「…」

無言の要求を口でふさぎました。



「男の子なんだから女モノ着ても似合わないよ」

あはは、その通りです。

「やっぱり男の子だよね」

うん、その通りです。

「浮気っぽいでしょ?」

イエス、その通りです。

「他に好きな人いるの?」

どうでしょうね。


帰り際に目を瞑って顔をこちらに近づけてきました。

僕は黙って鼻の頭に口をつけました。

「何それ~」

大人になったら意味を教えてあげますよ。

だからしばらく子供のままを楽しんでください。

それが僕からのわがままです。


さて、先に大人にならないといけないのはどっちでしょうか。

「君の方だよ」

あはは、そうでしょうね。

ひとりでに笑いがこみ上げてきて、タバコの煙でむせ返りました。

駅のホームでは僕の笑い声だけがやけに目立ちました。

2010.04.23 Fri l とある~ l コメント (0) トラックバック (0) l top
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