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季節は夏から一跨ぎで秋を飛び越し冬になったていた。一月前の暑さは今となっては名残惜しいが、学生にとって季節の変わり目なんてそうたいしたものじゃない。せいぜい大型の休みと試験の有る無しかだ。特に僕のようなさほど交友関係も広くない人間にとっては、日々の進みが気温の違いとしか感じない。せめて思考に違いを持たせようにも、どうも頭が回らない。少し難しいことを考えようにもそのこと自体に酔ってしまって、周りから見れば大した考えでなくても、自分にとってはとても偉大な発見をしたという感覚はいまいち好きになれないし、かといって日々の雑多な出来事を思い浮かべてもさほど面白くも無い。そしてさっきから消極的な考えしかしてないことに気付き、ああ、これが冬なんだなと思ってしまう。少しにやけながらポケットから煙草を取り出して口にくわえて火を付けた。吐きだした煙にため息が混じっている気がする。情けない。

「あ、いけないんだ。学生のくせに」

少々くぐもった女の声が聞こえた。めんどくさそうに振り返るって女の顔を見たがどこかで会ったかな。思い出せない。今の僕の服装は学生服では無く私服なので、それで僕が学生だと知っていることは学校の関係者か。そして見た目から僕と同年代と推測できる。以上の情報から彼女は僕が通っている高校の同級生ということになるな。ああ、自分の推理力が恐ろしい…

「なににやにやしてるの?どうせ大したこと考えてないんでしょうけど」

失礼な奴だ。僕の素晴らしい推理を大したことない考えとは。まあいい。とりあえずこいつは誰だ。

「なに?もしかして私のこと知らないの?クラスメイトじゃん。ほら、国島君子。君の斜め後ろの」

怪しげに睨んでると向こうから勝手に自己紹介してくれた。斜め後ろなんて微妙な位置にいる人間なんて覚えてるわけない。しかしそんな態度は微塵も出さずに適当に相槌を打っておく。僕なりの処世術だがどうやら彼女には通じてるらしい。そこから国島は僕の隣に座りとりとめもない会話が始まった。試験のことや先生の評判に、誰がくっついただの別れただの。世間一般的な今どきの女の子の会話だ。やっぱり小夜子とは違う。小夜子にも年相応な女の子の話題でも振ってやればいいのかな。

「ねえ、聞いてる?」

「ああ、ごめん。何?」

そう言いながら二本目に火をつけようとしたら、国島の視線が僕の口元に移っていた。

「それ美味しいの?」

「どうだろうね」

「どうせ格好つけで吸ってるんでしょ」

「うん」

「誰に恰好つけてるの?」

「女の子」

そこで会話が止まってしまった。何か拙いことを言ったのだろうか。少し不機嫌そうだ。

「それちょうだい」

国島が僕の前に立って顔を少し近づけて言った。興味が沸いたのだろうか。断る理由も倫理観も持ち合わせてないので、ポケットをまさぐって煙草を取り出そうとした。

「これでいいよ」

そう言いながら僕が咥えている煙草を人差し指と中指で挟んで取り上げて、それを口にくわえた。すぅという音が聞こえた後に、思いっきり咽る音とともに飛んでくる少量のつば。そして国島は気分が悪そうにまた僕の隣に座った。まあ、当たり前か。僕も最初は気持ち悪くなったし。

「どうだった?」

形だけ聞いてみた。

「気持ち悪い…」

案の定の答え。それからまた訪れる無言の間。少し責任を感じたせいかちょっと気まずいので、僕から会話を振ってみた。

「どうして吸おうと思ったの?」

「格好つけようと思ったから」

「誰に恰好つけようとしたの?」

「男の子」

「いないじゃん」

「…バカ」

最後は小声で聞こえなかったが、少しは気分がよくなったのだろうか。よろめきながらも国島は立ち上がった。

「今日は帰るね」

まあ、少し心配だが大丈夫か。日もそんなに暮れてないし十分安全だろう。僕も帰ろうとして国島と反対方向に歩こうとした。

「ねえ」

国島に呼び止められたので振りかえった。少しむくれてるが、なんだろうか。

「君はもう少し女心を勉強した方がいいよ」

何のことかよくわからなかったが、とりあえず「善処しとく」だけと言って、またお互い歩き出した。

「今日のことは二人だけの秘密ね」

僕は振りかえらず手だけ振って返事をした。



「おかえりさない」

家につくと小夜子が少しだけ微笑んで出迎えてくれた。居間では暖房がついてるせいか暖かい。

「お兄様、煙草を吸われたのですね」

そういって小夜子は僕に抱きついて鼻をひくつかせる。

「お兄様の匂いだわ」

そう言って胸元に頬を寄せ、恍惚とした表情を浮かべる小夜子だが、しばらくして表情がみるみる曇っていった。

「お兄様…」

小夜子の刺すような視線が痛い。どうしたんだろうか。

「女性と近づいて会話をしましたね」

小夜子の目から涙がこぼれおちた。罪悪感がヒシヒシと募ってきた。

「ひどいわ」

その場でへたり込んで目を袖で拭っている。どうすればいいんだろうか。

「ごめんよ、どうすればいい」

「お兄様のせいよ。お兄様がいるかぎり私は泣きやまないわ」

「わかった。僕は自分の部屋へ行くよ」

「今お兄様がどこかへ行けば私は死ぬわ」

「じゃあどうすればいいんだい」

そう言うと小夜子は立ちあがって僕の袖をつまみ、電気ストーブの前まで引っ張った。

「私が泣きやむまで私のそばにいて」

口をすぼめて睨みながら小夜子は座った。

「僕がいる限り泣きやまないんじゃなかったのかい」

僕はそう言いながらもかぶりを振り隣に座った。

「お兄様は女心を勉強するべきよ」

そう言いながら小夜子は僕の膝に頭を載せて「ふん」とだけ漏らしそのまま口を閉じた。国島の言うとおり僕は女心の理解度を足りないらしい。なら女心を考えてみるかな。そう思いながら、本日三本目の煙草に火をつけた。
2010.11.26 Fri l 妄言 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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