FC2ブログ
10
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- -- l スポンサー広告 l top
私がいた部屋には、必要最低限以外のものは本当に何も置いてなかった。床に直にひいてある布団は私自身の寝汗がついていて、入口の近くに置いてあるトイレは私の吐しゃ物のせいか酸っぱい匂いがしている。トイレは看護士に言わなければ水が流れなくて、そのために呼ぶのも面倒くさいので放置していた。

人との接触は食事と薬を持ってくる看護士だけで、笑顔で持ってくる人や、侮蔑の目を向けて来る人もいた。机代わりに箱のようなものを出されそこに食事を置いて食べた。みじめだと感じる余裕すら残って無く、スープ類だけ口につけて後は残し隅の方でうずくまる日々。とりあえず考える余裕だけはできていた気がする。

そんな私を見て看護士や医者は落ち着いたと思ったのだろうか。定められた時間なら大広間の方に出てもいいと言われた。正直うれしかった。自分の現状を把握する情報が増えるからだ。部屋を出て通路を渡り二重にこしらえてあるドアを出ると…そこで最初に感じたことはここは動物園だなということだった。

みんなスウェットを着てフラフラしたり、廊下をぐるぐる回ったりとしている。電話ボックスから家族に連絡している人や、陰謀で閉じ込められたと喚く人…猿山の方がましだなという印象を受けた。なら私も猿以下かなと思ったのだが妙に納得した。

所在なくたっていると一人のおばあさんが私の前に立っていた。背が低く可愛らしい顔立ちをしてたが目には目やにがびっしり付いており変な匂いがする。これは死臭かな…昔どこかで聞いたことがあるな…そう考えるとおばあさんが話し始めた。

「ここはどこですか」

私が何も答えの無いのはお構いなしに、おばあさんが話し続けた。

「私は家に帰りたいんです。駅の近くなんです。駅から出れば帰れます。でも駅への道が閉まってるんです」

そう言いながら鍵がかかったドアを指差した。そうですか、あそこが開けば帰れるんですかと聞いてみた。

「はい、家族の住む家があるんです。駅に閉じ込められました」

そうか、そういうことならしょうがないですね、そして私はドアを思いっきり蹴飛ばした。少しだけ軋んで開きかけた気がするのでもう一回蹴ってみた。やっぱり頑丈だな。もう一度蹴ろうとした時、看護士に止められた。手慣れてるのか特に驚いてもいなかった。

「やっぱりまだ落ち着いてませんね」

引きずれるように看護士に元の部屋に連れられたが、特に抵抗はする気はなかった。ちらりおばあさんの方を見ると、また違う人に話しかけていた。

「あんた捨てられたんだよ」

心の中でそう呟いて、私はまた部屋の中でうずくまった。その後、大広間に出ることになったが私が退院するまでおばあさんの面会は誰も来てなくて、いつのまにかおばあさん自体いなくなっていた。
2010.12.13 Mon l 妄言 l コメント (0) トラックバック (0) l top

コメント

 

コメントの投稿












 

トラックバック

トラックバック URL
http://uodiru.blog115.fc2.com/tb.php/294-a536b5c1
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。